麹菌の働き
日本酒醸造に関わる言葉の中で出てくる「麹」とは麹菌を穀物に繁殖させたものの総称です。
穀物に繁殖させるので米に繁殖させたものを米麹、芋や麦に繁殖させたものをそれぞれ芋麹、麦麹と呼びます。
日本酒造りでは上記イラストの、米麹が使用されます。
微生物の力を借りて、人にとって有害なものを作り出すことを腐敗、人にとって有益なものを作り出すことを発酵といいます。
納豆、醤油、味噌なども麹菌や有益な微生物による「発酵」によって造られます。
麹菌の種類
麹菌にはいくつか種類があります。
黄麹菌
糖化力が強いタイプで、清酒に使われることが一番多い麹菌です。
黒麹菌
黄麹菌と同様に糖化力が強く、クエン酸を大量に生成します。
コクが出るタイプなので主に泡盛に使用されます。
白麹菌
黒麹菌と同じくクエン酸を大量に生成しますが、白麹を使ったお酒は爽やかでフルーティーな味わいで、優しい口当たりに仕上がります。
また黒麹や白麹は上述のようにクエン酸をたくさん生成し、雑菌の繁殖を抑えてくれるので、比較的温暖な気候の地域でのお酒造りに使用されたりします。
日本酒は主に黄麹菌を使うのでクエン酸は生成されません。雑菌の繁殖を抑えるために、乳酸を生成させたり添加します。
というわけで、黒麹菌と白麹菌は主に気温が比較的高い、九州や沖縄で造られる泡盛や焼酎に使用されます。
白麹の日本酒 | 黒麹の日本酒 |
新政酒造 【新政 亜麻猫 (あまねこ) 白麹仕込】 |
池亀酒造 【黒兜(くろかぶと)】 |
清酒用の黄麹と白麹を混ぜると亜麻色になることからこの名前が付けられている。 | 黒麹菌がかぶとをかぶったように見えることから、黒兜と名付けられた。 |
麹菌の生やし方の違い。突き破精と総破精(つきはぜとそうはぜ)
「破精(はぜ)」とは、蒸米に繁殖した麹カビの生え方、度合いを表現する言葉です。
米表面で菌糸が広がっている状態を「破精廻り」、米の中心部に菌糸が食い込んでいる状態を「破精込む」と言います。
この麹菌の菌糸の増殖形態、または生やし方によって麹は2種類に分けられます。
日本酒はお米と水から造られます。前回は水の違いについて書きましたが、今回は原料となるお米について。日本酒造りに使用されるお米は食用米とは少し違うんです。 [sitecard subtitle=関連記事 url=https://anz-[…]
総破精 | 突き破精 |
自分で心白部分に延びるだけでなく、 |
外側の栄養は自分の手の届く範囲しか摂れない。 その分、心白から栄養を取ろうと中心部に伸びる。→すっきりとした吟醸系に使用される |
総破精
米の表面全体に菌糸が生えていて、さらに内部にまで深く食い込んでいる状態の麹です。
表面全体の菌糸が生えている部分を分解します。つまり、外側に多く含まれるタンパク質・脂質を分解し、アミノ酸に変えるため、味の乗ったタイプになります。
また菌糸自体にもアミノ酸や拡散が多く含まれるから、菌糸数が多い総破精はどっしりとした、濃厚なタイプを目指す時に使用されます。
突き破精
米の表面にまばらに菌糸が生えている状態の麹です。表面の破精面積は少ないですが、その分米の内部にまで破精込んでいます。
表面に菌糸があまり伸びていないため、外側から栄養が摂れません。そのため、内側へ生えて栄養を摂取しようとします。
表面から栄養をあまり摂れないので、端麗なタイプや吟醸酒を目指す時に使用されます。
コクや味のバランス、目指す味によって、杜氏さんが調整するんです。