日本酒はお米と水から造られます。前回は水の違いについて書きましたが、今回は原料となるお米について。日本酒造りに使用されるお米は食用米とは少し違うんです。
日本酒の原材料は米と水です。水はそのうちの約80%を占めますが、この原料そのものになる水の事を仕込み水、と言います。 しかし、この仕込み水以外にも日本酒が造られる工程で様々な用途で水が使われます。 酒造りに必要な水は、仕込みに使う総米重[…]
お米には代表的な成分が5つあり、目指すお酒のタイプに合わせて、お米を削ります。
お米の主な5成分
①炭水化物(お米の成分中70~75%)
- 米に含まれるでんぷんのこと
- 麹菌が このでんぷんを分解して糖(ブドウ糖)になる
→この糖は酵母菌のエサになる
②タンパク質(お米の成分中7~8%)
- 糠層や胚芽に多く含まれる
- 麹菌が分解してアミノ酸になる
- 日本酒の旨味の要因になる
③脂質(お米の成分中2%)
- 糠層や胚芽に多く含まれる
④灰分(ミネラル分)(お米の成分中1%)
- カリウム、リン、マグネシウム、カルシウムの4成分があり、微生物の生育に必要
⑤ビタミン
- 胚芽部分に多く含まれる
- ビタミンやミネラルは発酵を促す作用がある
反対にしっかりした味わいの日本酒が飲みたいなら、お米をあまり削っていないタイプがオススメ。アミノ酸由来のコクがあるから飲みごたえがありますよ。
酒米と食用米の違い
冒頭で「お酒造りに適したお米が使用されることが多い」と書きましたが、もちろん食用米で造られた日本酒もあります。
じゃあなぜ酒米と食用米の2種類が存在するのか?ですが、酒米は文字通り、酒を造るためのお米で、酒造り用に品種改良されたものを言います。
酒米の特徴としては
- 粒が大きい
- 心白が大きい
- 削っても割れにくい
- 麹菌糸が食い込みやすい
などがあります。
日本酒は削って使用する事が前提です。
普段私達が食べている白米はせいぜい10%くらいですが、日本酒は大吟醸を名乗ろうと思うと50%以上削らなければなりません。少しづつ削っていくのですが、その間の摩擦に耐えられる大きさと強度が必要となります。
心白に含まれる成分にはでんぷんが多く、雑味になる成分が少ないため、お米の周りを削って心白のみを削りだすことで、すっきりとした味のお酒に仕上がります。
また、心白部分は隙間が多く、柔らかいので麹の菌糸が奥まで入り込みやすいため、強い糖化力をもった米麹になります。(麹菌がでんぷんを糖に変換しやすい)
食用米は粒が小さく、心白も少ないため、周りを削って心白にたどり着く前にお米が割れてしまう可能性があります。
ただ、精米技術が上がった現在では、食用米でも半分まで削れるようになりました。
扁平精米、という新しい削り方
また、扁平精米という削り方で削っている蔵元さんもあります。
心白部分を多く残すためにお米を削る訳ですが、お米の形は縦長の楕円なのに、丸く削ってしまうと上下部分をたくさん削らなければなりません。
そこでお米の形と同じ楕円形に削る事によって雑味部分を効率よく削り、心白のみを残すことが出来ます。
扁平精米で精米すると40%削り(精米歩合60%)=60%削り(精米歩合40%)と同等のすっきり感が出せると言われています。
削り技術や割れにくいお米の品種改良によって、最近は地元のお酒は地元の米を使って差別化する蔵元さんも増えています。
食用米と酒米の違いが分かったところで次回は代表的な酒米を見ていきましょう。