どうして日本酒居酒屋には「杉玉(すぎだま)」が飾ってあるの?



どうしてあの球体が飾られているんだろ?
その球体の物体は「酒林(さかばやし)」もしくは「杉玉(すぎだま)」と言い、杉の葉を集めてボール状に形を整えたものです。
大きさは様々ですが、大きいものになると直径50cm、重さ20kgなんてものも!
日本酒と杉玉の深い関係
杉玉の意味その①→お酒の神様を祭るためのもの
杉玉はもともと、奈良の三輪山にある大神神社(おおみわじんじゃ)の神様を祭るためのものだったと言われています。
大神神社はお酒の神様を祭る神社として有名ですが、杉玉はこの三輪山のご神体である杉の葉で作られていました。神様が宿った杉玉を飾る事で、いいお酒が出来るよう、願掛けの意味がありました。
現在は三輪山の杉の葉で造られたものでは無く、酒蔵さんが自分達で造ることが多いようです。

杉玉の意味その②→お酒の熟成具合をお知らせするためのもの
新しく作られた杉玉は新酒が絞られる2月~3月に飾られ始めます。つまり、新酒が出来たことを知らせるための目印的な役割があるんです。
さらに杉玉をそのまま秋口まで吊るしておくことで、お酒の熟成具合を知らせます。

新調したばかりの杉玉は深い緑色をしていて、これを次の年まで一年間飾っておくのですが、季節が進むにつれて杉玉の色が変化していきます。
↓緑色の杉玉
杉の深い緑の葉が春から夏にかけて徐々に薄くなり、夏から秋にかけて枯れていき、茶色くなっていきます。
この杉の葉の色の変化と日本酒の熟成のスピードと似ているため、熟成具合を知らせる目的で飾られていました。
今は出来たての新酒のフレッシュ感が好まれることも多くなりましたが、火入れをしたお酒が主流だったひと昔前は、春先に新酒が出来上がってからしっかりと熟成期間を取り、丸みが出て味の乗った日本酒が一番美味しいとされていました。
桜が咲くのを待つように、杉玉が茶色くなるのを待ちながら美味しいお酒が仕上がるのを待つなんて、四季を愛でる日本人らしくて素敵ですよね。
ただし、これは毎年杉玉を新調している場合の話。酒蔵の場合は毎年杉玉を新調しているところが多いですが、日本酒居酒屋さんに関しては杉玉をつけっぱなし、というところがほとんどだと思います。(もちろん毎年替えているところもあるでしょうが)


酒蔵見学に行くまで「造ったばかりの杉玉は緑色」だっていうことも知らなかったよ。
最近は杉玉の数自体、減ってきており、コストの面から新調しないというケースもあるようです。
今はわざわざ手間もコストもかかる杉玉を毎年新調してお酒の出来具合を知らせなくても、ネット等で情報発信出来る時代ですからね。寂しいですが…
でも杉玉を毎年新調しないにしても、日本酒を取り扱っている方々の「お酒の神様に感謝する」という気持ちは一年を通して変わらないはずです。
- お酒の神様を祭るためのもの
- 新酒の出来、熟成具合を知らせるためのもの
- 「いい日本酒ができますように」というお守り的要素
- 「日本酒扱ってるよ!」広告看板的要素
このように、日本酒と杉玉は深い関係にあります。
私達もいつも美味しいお酒を造ってくれている日本酒業界の方々と酒神様に感謝の気持ちを忘れないようにしたいものです。