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上槽(じょうそう)のしくみが分かれば日本酒ラベルに書かれた言葉の意味もグンと広がる!

今回は上槽(じょうそう)について。上槽のしくみが分かるようになると、ラベルに書いてある意味、味の特徴が想像できるようになりますよ!
上槽時の言葉として「槽(ふね)絞り」、「あらばしり」「中汲み(中取り)」、「責め」、「袋吊り」、「しずく酒」、「斗瓶囲い」等があります。
ほほーのかえる
けろりん
どの言葉もよく日本酒のラベルによく書いてあるよね!でもそもそも上槽ってなに?

上槽(じょうそう)とは

醪(もろみ)※から液体部分を絞り出す作業のことです。
※発酵中の液体、お米が溶けてどろどろになった状態のもの
清酒として名乗るためには「お酒である液体部分と酒かす部分に分離する作業」が必要になり、この上槽作業を経て初めて「清酒」と名乗れるわけです。
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日本酒と清酒の違い
この日本酒を絞る方法、また、絞った時にどの段階の液体を指すか、によって言い方が変わります。
搾り方が違うと味も変わってきます。基本はこの全てをブレンドして味を均一化し、出荷されるのが一般的ですが、新酒の出回る時期にはそれぞれの絞り方のみのお酒で瓶に詰め、出荷さることも多いです。

日本酒の絞り方の種類と違い、特徴

搾り方その① 自動圧搾機

上槽工程で一番多い方法がこのタイプ。日本酒ラベルに絞り方や絞った酒の名称(槽しぼり、あらばしり、中汲み等)の表現が書いていなければ、この自動圧搾機を使用していることが殆どです。
布でくるまれた板が何重にも重なっていて、その中に醪を入れて押すと板が押されて槽口部分から液体が出てきます。
油圧圧搾機

搾り方その② 槽(ふね)絞り

布で出来た酒袋に醪を詰めて、槽(ふね)と呼ばれる長方形の入れ物の中に敷き詰め、絞ったものです。

この時、重なった袋同士の圧力で最初に槽から出てくる液体を「あらばしり」、次に圧力を加えて出てくるお酒を「中汲み」、最後に絞り切った時に出てくる液体を「責め」と言います。
上槽-槽搾り
槽搾り。酒袋を槽に敷き詰め絞る。
笑顔のたま先生
たま先生
あらばしり、中汲み、責め。ではひとつつづ見ていきましょう。

あらばしり

あらばしりとは、もろみを詰めた袋を槽に並べてその袋を重ねた重みだけで染み出てきた液体の事を言います。
あらばしりの特徴は重み以外の圧をかけないことです。おりが絡んで白く濁っており、ピチピチ感がさわやかなフレッシュな日本酒です。
酒袋を積み重ねた重みだけで出てくる白く濁った液体
笑顔のたま先生
たま先生
自動圧搾機を使っている場合は最初に出てくる液体の事を指します。

中汲み

「中取り」とも呼ばれます。あらばしりが終わった後、重ねた酒袋に押し蓋を乗せて圧をかけます。
この時に絞られて出てくるお酒の事を中取りと言います。香味のバランスが取れており、一番品質が良いとされる日本酒です。
中汲み。圧力をかけた最初の方に出てくる液体

責め

更に圧力をかけて絞り切った時に出る最後の液体のことを責めといいます。
潰れた米粒の雑味が出やすいので、あらばしり・中汲みと比べると「責め」のみで商品化しているタイプはあまりありません。
責め。中汲みの後、更に圧力をかけて出てくる液体のこと

搾り方その③ 袋吊り(ふくろつり)

醪を酒袋に入れます。ここまでは槽絞りと同じです。次に酒袋を重ねて置くのでは無く、口を縛って吊るします。
雫酒、瓶囲い、袋吊り
この時に出てくる液体を「しずく酒」と言います。
「袋吊り」、「瓶囲い」は指している箇所が違うだけで、基本は同じ搾り方のことを言います
ひとつひとつ袋を吊るしていくので、重労働作業です。さらに取れる量もわずかで時間がかかります。
あらばしりは袋の重みの圧力がかかりますが、袋吊りの場合はその圧力もかかりません。残った米粒が潰れにくいため、よりすっきりとキレイな味に仕上がります。

搾り方その④ 遠心分離

布袋は使わず、容器に入れて高速回転することで、酒かすと液体部分に分けるというもの。布袋の網目も通らないため布袋の臭いがつかず、ストレスなくお酒の香りや旨味を取り出せます。回転スピードを調整することによって、透明なお酒から滓がらみまで造れます。

遠心分離

搾り方番外編 いかきどり

風の森シリーズで有名な油長酒造が開発した上槽方法です。

こちらも酒袋は使いません。「いかき」というのは竹で編んだザルのようなもので、表面がこの「いかき」の網目のようになっている筒を醪に沈めて液体を分離するというもの。

こちらも袋吊りよりも清酒が空気に触れることなく分離させることが出来るため、香味を逃すことなく取り出せるそうです。

いかきどり
上槽のしくみ、お分かりいただけたでしょうか。
あらばしり、中汲み、責め、雫どり、しずく酒、等いろいろな表現が出てきましたね。
このように醪から液体を絞り出す方法や絞る段階で言い方や味が変わります。
同じシリーズで「あらばしり」「中汲み」「責め」の飲み比べセットを販売している蔵元さんもあります。
笑顔のたま先生
たま先生
是非、言葉の意味を知った上で実際に味がどう違うのか、試してみてはいかがでしょうか♪