実は日本酒は一年を通して造られていた時代と、冬の時期のみ造られていた時代があります。冬の時期に日本酒を造ることを「寒造り」、一年を通して造ることを「四季醸造」と言います。
四季醸造から寒造り⇒そしてまた四季醸造へ
現在の四季醸造は空調設備等が整っており「一年中酒造りが行える」という意味です。
でも昔の「四季醸造」の意味は少し違っていました。
江戸時代初期までは一年を通して、とは言っても少し造られる時期が短く、造る季節によって5種類に分類されていました。
新酒 旧暦8月頃に造られるお酒。新暦では8月下旬から10月上旬。
間酒 10月中旬以降に造られるお酒。新酒と寒酒の中間に仕込まれるから間酒と言う。
寒前酒 寒酒造りに入る前の、11~12月にかけて造られる。
寒酒 寒中【小寒から立春までの1か月間(だいたい1月5日~2月3日頃)】に造られる。
春酒 寒が明ける2月から3月下旬頃にかけて造られるお酒。
この5つの時期に造られる酒の中でも、寒中に造られる寒酒が日本酒造りにとって最適の環境でした。品質の良いものが出来るので価格は他の季節に造られたものよりも高価だったといいます。
温度管理が難しい日本酒造りを寒中に行うことで、雑菌の繁殖を抑えやすいという理由があります。
そんな酒造りの経験から、日本酒造りは寒造りに集中していきました。
他の原因としては江戸幕府が酒造統制を行ったこと。
その時の米相場や食料事情によって酒造りに規制をかけたのです。米不足になると酒造りに回すお米が無い為、寒造り時期以外は酒造りを禁止しました。逆に米がたくさん収穫された年は「他の季節も造っていいよ」と許可が出る。ただ、これだと寒造り以外の時期は許可が下りないと造れません。
造れるのか造れないのか分からないから不安定ですよね。そうしたことから、だんだんと寒造り以外のお酒は造られなくなっていきました。
結果、寒中に造られる寒造りのお酒が集中していったのです。それからしばらく四季醸造は衰退していました。
しかし昭和に入り、技術の進歩によって一年を通して温度管理の出来る設備が整うようになり、いつでも新酒を造れる四季醸造が復活しました。昔の四季醸造と違うのは、外気温に左右されない、安定した新酒がいつでも造れるようになったことです。
このように
江戸時代初期の「四季醸造」=季節ごとにお酒造りを行うこと
現在行われている「四季醸造」=1年中お酒造りを行うこと
というように少し定義も変わっています。
ですのでまだまだ今の日本酒造りは冬の時期の11月~3月に集中しており、秋に収穫された新米を原料にして、仕込みが始まる「寒造り」が一般的です。