曖昧な日本酒の冷(ひや)酒の意味。常温と冷酒、どちらが正しいの?
日本酒の注文時にトラブルが多い冷(ひや)酒の温度。
日本酒の「ひや」は「常温のお酒のこと」を意味します。
ただ、冷(ひや)酒という表現から、「冷たいお酒のこと」と思っている方も多いんですね。
冷(ひや)酒注文時ありがちトラブル
①「ひや(常温のつもり)ください」⇒冷たいお酒が出てきてしまった
②「ひや(冷酒のつもり)ください」⇒常温で出てきてしまった
私達消費者側と提供者側の「ひや」の認識が違うために起こってしまうトラブルですね。
なぜこんな認識違いが起こってしまうのでしょうか?
原因としては
- 冷蔵庫が普及したこと
- 冷やした日本酒の人気が出たこと
が、あげられます。
冷蔵庫の登場で冷(ひや)酒の定義が増えてしまった
冷蔵庫が無かった昔の時代、温めていないお酒のことを全て冷(ひや)酒と呼んでいました。
つまり、冷や酒とは常温のお酒のことを意味していたんです。
しかし冷蔵庫が一般的に普及した現在では、10℃前後に冷やした日本酒のことも「ひや」と呼んだりするように。
冷やして飲むのがおすすめな吟醸酒系の日本酒が流行った
日本酒はタイプによって特長を生かせる、おすすめの飲用温度があります。
その中でも吟醸酒は10~15℃くらいに冷やして飲むと、華やかな吟醸香や繊細な味わいが際立ちます。
この吟醸酒系の人気が上がり、「日本酒は冷やして飲むと美味しい」という認識が広まりました。
純米酒は温めた方が美味しく化けるタイプも多いのですが、冷えた日本酒の方が人気があることに加え、熟成が進まないようにお店側ではどんなお酒も冷蔵庫に入れて保管されていることが多いです。
そうなると、日本酒注文の温度帯は冷たいお酒か、燗酒のどちらかになります。
こだわりの日本酒居酒屋さんでは「ひや(常温)」の日本酒も置いていますが、そもそも置いてないところも。
日本酒知識のあまりない店員の方だと、「ひや」=冷たいお酒と思ってしまうのも無理ありません。
薄れつつある本来の冷(ひや)の意味
秋の季節酒である「ひやおろし」の「ひや」も、「気温の下がった秋口に常温で出荷する」という意味があります。
日本酒の歴史や背景に詳しい方は当然のように「常温のお酒」を「ひや」と表現します。
一方、初心者の方や若い方は「ひや」=冷たいお酒と認識している方も多いです。
どちらが悪い、間違いということはありません。
原因は「ひや」という言葉の定義が現在、曖昧になってしまったことにありますから…。
例えば…
- 下駄箱⇒靴を入れる棚だけど「下駄」と表現する
- 筆箱⇒ペンや鉛筆を入れる箱だけど「筆」と表現する
と同じように、
- 冷(ひや)酒⇒冷たくないけど「冷や」と表現する
このように「ひや」は昔の言い回しが残っているけど、今だに一般的に使われている言葉の部類に入るのではないでしょうか。
冷蔵庫が当たり前になってしまった現在、常温のお酒に「ひや」という表現を使うのは、少し違和感が出始めているのかな…とも思います。
冷(ひや)酒の注文時は「常温で」と頼もう!
このように冷たくないけど「冷(ひや)」と表現する常温の日本酒。
お店で常温の日本酒を飲みたければ、店員さんとの認識の齟齬を防ぐために「ひや」では無く、「常温で」という言葉を使って注文すると確実ですよ。
逆にあなたの「ひや」の認識=冷酒で、「ひやください」と注文した場合。
あなた 「(冷酒のつもりで)ひやください。」
店員さん 「お待たせしました、ひや(常温)です。」
あなた 「冷酒が欲しかったんだけどな…。」
確かにお店の方は正しい温度帯で持ってきましたが、あなたに非はありません。
常温の日本酒を提供するお店側の方であれば、お客さんに「ひやで」と言われ時、「常温ですがいいですか?」と、付け加えるべきですから。
お店側の人が、注文側が常温・冷酒のどちらを意図しているのかを確認してくれたら、トラブルが無くなりますよね。
曖昧な定義や表現が多い日本酒ですが、お互いに分かりやすい表現を心がけたいですね。