ラベルに書いてある製造年月日=賞味期限?
よくあるのが製造年月日=賞味期限という誤解。
酒税法では賞味期限の記載は義務付けられていないので、賞味期限の記載はありません。
つまり、「賞味期限は無い」ということになります。
日本酒に「賞味期限が無い」理由→健康上の害は出ないから
食品には賞味期限と消費期限があって、
- 賞味期限→美味しく食べられる期間
- 消費期限→安全に食べられる期間
の違いがあります。
生肉や生魚等の生鮮食品は劣化が速いので、「消費期限」が設定されています。消費期限を過ぎたら身体に害がある可能性があります。(お腹を壊す等)
一方、お菓子や調味料等の加工食品には「賞味期限」が設定されていますが、消費期限と違い過ぎたからと言ってすぐに食べられなくなる訳ではありません。
「安全に飲み食いできなくなる状態」というのは身体に害を及ぼす菌が発生する、ということ。
賞味期限ありのものも風味が落ちるだけで、未開封であれば何年経っても食べられます。(味を気にしなければ)
日本酒の場合、アルコールなので殺菌力があり、通常の雑菌は繁殖出来ません。
さらに火入れをして生き残っている菌を殺菌後に密閉します。
菌が侵入しない・活動しない状態で保管すれば日本酒は賞味期限は無いんです。
日本酒に「賞味期限がある」理由→日本酒が劣化して味覚的に飲めなくなるから
未開封・開封後に限らず、日本酒をぞんざいな扱いで保管して劣化したとしても、健康上の問題だけを考えれば飲めなくなるわけじゃありません。
ただ、劣化したお酒は酸っぱい味がしたり、変なにおいが発生する場合があります。
日本酒における熟成と劣化の違い 日本酒には賞味期限はありません。なので味を気にしなければ古い日本酒を飲んでも食中毒のような状態とはなりません。しかし数年経過し、それが「熟成」したものか「劣化」したものかによって風味は大きく変わってきます。[…]
賞味期限は無くても、せっかくの美味しいお酒はいい状態で飲みたいですよね。
そこで日本酒には賞味期限に近い言い方で「美味しく飲める期間」という言い方が存在します。
日本酒を「美味しく飲める期間」の基準
- 火入れ酒(2回火入れ)…12カ月
- 生貯蔵、生詰め酒(1回火入れ)…9カ月
- 生酒(火入れ無)…6カ月
※あくまで目安です。
2回火入れをしたものの方が菌が死滅した状態なので、長持ちします。
逆に火入れをしない生酒は酵母も酵素も活動しており、不安定な状態なので品質が変化しやすいんです。
また、火入れをしていない生酒には「火落ち菌」が含まれている可能性があります。
火落ち菌は空気中のどこにでも存在する菌で、アルコール耐性があるので日本酒の中で生きられます。
「火落ち菌」は名前の通り、火を入れれば死滅しますが、生酒は火入れがないので、この菌が生きた状態なのです。
乳酸菌の一種なので人体に害は無いのですが、これが繁殖すると酸っぱい臭いと味でとても飲用に耐えなくなります。
火落ち菌が繁殖しやすい温度帯は20℃前後で、低温帯であれば活動することはありません。
味の劣化を招く火落ち菌を繁殖させないために、生酒は必ず冷蔵庫に入れて保管しましょう。
開封後、日本酒はいつまで飲めるの?
繰り返しになりますが、日本酒は身体に害を及ぼすような賞味期限は存在しません。
開封後もきちんと冷蔵庫で保管すれば味は変化しますが数か月経っても飲めます。
ただ、未開封の状態に比べると「味の変化スピードが加速する」ため、生酒等のフレッシュ感を味わいたいタイプであれば、開封後はガスが抜けて新鮮さが無くなってしまいます。
1週間程度で早めに飲むようにしましょう。
開封時の味が気に入らなければあえて数日~1週間程、寝かせてみて変化をみるのも楽しいですよ。
尖った印象が優しい印象に変わることもよくあることです。寝かせる場合は冷蔵庫で保管しましょう。
また、開封した日本酒は、上記で説明した空気中の「火落ち菌」が入って繁殖してしまうので、蓋は開けっ放しにしない事も大切です。
賞味期限と勘違いしやすい製造年月日。何の日のこと?
製造年月日とは、日本酒が出来上がって「瓶に詰められ、出荷できるようにした状態にした日」を指します。
これは、酒税が出荷の段階で課税されるようになっているからです。
熟成感を出すために、日本酒が出来上がったあとすぐには瓶に詰めず、タンクで貯蔵してから瓶詰めするところもあります。
あくまで「瓶に詰められた日」なので、前日に出来上がった日本酒を詰めたものと、出来上がってから時間が経った日本酒を詰めたものの製造年月日表記は同じになります。
つまり、製造年月日の情報だけでは酒造年度内に造られた新酒なのか、古酒なのか判断できないということです。
酒蔵内で数年貯蔵されたものは製造年月日(瓶詰め日)とは別に酒造年度を記載している事もあります。そうすると何年寝かせたものなのか、計算出来ます。
酒造年度とは
お酒が造られた1年間の期間を指します。英語表記ではBrewery Yearと言います。
これもまた紛らわしいのですが、酒造年度は醸造酒業界独自の区切りを持っています。
※話が広がりすぎるので、詳しい事情は他のサイトで調べてね(笑)
つまり
- R1BY⇒令和元年7月1日~令和2年6月30日の期間に造られたお酒
- R2BY⇒令和2年7月1日~令和3年6月30日の期間に造られたお酒
となります。
令和2年の4月1日に飲んだ日本酒に「R1BY」と書いてあったらそれは「去年のお酒」ではなく「今年度のお酒」です。
この酒造年度は製造年月日のように必須項目ではないため、書いていないことの方が多いです。
理由としては
②味を平均化するために、古酒と新酒をブレンドする場合がある
③そもそも古酒の人気があまり無い
等があります。
貯蔵・熟成技術が上がり、古酒が見直されてきている現在、あまり重要視されていなかったBY表記が新しいブランド価値を生み出していくかもしれませんね。
- 日本酒に賞味期限は無いけど「美味しく飲める期間」はある
- 未開封・開封後どちらも、味を気にしなければ長期保存したものでも健康被害は無い
- 適切な保管をしないと味が劣化する
- 開封後は味の変化スピードが上がるので適切な温度管理・密封を心がける
興味ある方は下記の記事も参照にしてくださいね♪
日本酒は未開封であれば基本、賞味期限はありません。ただ、「美味しく飲める期間」は存在します。 そして火入れのお酒より、生酒の方が酵母が生きている分、味が変化しやすいです。 「美味しく飲める期間」が長いか短いかというメッセージのひとつに、[…]