特定名称酒と普通酒の違い
日本酒ラベルには大吟醸とか純米等と書かれていますが、これらのことを「特定名称酒」と言います。
好き勝手に書いて良いわけでは無く、特定名称酒を名乗るには一定の条件・決まりがあります。
共通の前提として
②原材料は米、米麹、醸造アルコールのみ
③米の等級は3級以上であること
※お米の等級は1等、2等、3等、規格外で格付けされています。(粒が整った形をしているか、透明感や色艶、虫食いの有無などで判定)
と言う条件があります。
これにプラスし、原料・精米歩合等によってさらに8種類に分類されます。
特定名称 | 原材料 | 精米歩合 | 麹米使用割合 | 香味等 |
純米大吟醸酒 | 米、米麹 | 50%以下 | 15%以上 | 吟醸造り、香味・色沢が特に良好 |
純米吟醸酒 | 米、米麹 | 60%以下 | 15%以上 | 吟醸造り、香味・色沢が良好 |
特別純米酒 | 米、米麹 | 60%以下、または特別な製造方法 | 15%以上 | 吟醸造り、香味・色沢が特に良好 |
純米酒 | 米、米麹 | ー | 15%以上 | 吟醸造り、香味・色沢が良好 |
大吟醸酒 | 米、米麹、醸造アルコール | 50%以下 | 15%以上 | 吟醸造り、香味・色沢が特に良好 |
吟醸酒 | 米、米麹、醸造アルコール | 60%以下 | 15%以上 | 吟醸造り、香味・色沢が良好 |
特別本醸造酒 | 米、米麹、醸造アルコール | 60%以下、または特別な製造方法 | 15%以上 | 吟醸造り、香味・色沢が特に良好 |
本醸造酒 | 米、米麹、醸造アルコール | 70%以下 | 15%以上 | 吟醸造り、香味・色沢が良好 |
特定名称酒の分類条件
醸造アルコールの有無
特定名称酒のうち、原材料に「醸造アルコール」が入っているのかどうかで分類が変わります。
醸造アルコールは添加物では無く、ボリュームを抑えてすっきり目のお酒にしたい場合等に使用したり、香りを引き立たせたい場合に使用されます。
原材料名に醸造アルコールの表記が無ければ特定名称酒には「純米」とつきます。
どのくらいお米が削られているか
お米には外側の部分に旨味や雑味のもとになる成分があります。
お米を沢山削る事で雑味が少なくなり、すっきりした味わいになります。
ボトルに書かれている「精米歩合」の数字がお米の削り量を表していて、「%」という表記で書かれています。
ややこしいのは削った割合では無く、残った米の割合を表したものということ。
ラベルに精米歩合60%と書かれていた場合
全く削られていない玄米の状態⇒100%として…
- 60%=残った米の割合
- 40%=削った米の割合
となります。
精米歩合の数値が低いほど、残った米の割合が少ない=お米は削られている
という意味になります。
これらの条件をクリアしていることで品質の良い、美味しいお酒であると判断できるため、特定名称酒を名乗れます。
この基準に満たない日本酒は「普通酒」となります。
純米吟醸、純米大吟醸、吟醸、大吟醸、
より沢山削られているものの方に「大」とついていますね。
純米大吟醸、大吟醸クラスになるとお米が半分以上削られているので、その分沢山お米が必要になってきます。
また、「吟醸」タイプは削ったお米を低温でじっくり発酵させる吟醸造りで造られています。
低温発酵により、果物のような香りを造り出しますが手間も時間もかかります。価格が高いのはそのためなんです。
特定名称酒から分かる味の傾向
上記の点を踏まえて見ていくと、
- 醸造アルコールが使われているもの…ボリューム感を抑え、キレのある味になる、吟醸香を引き立たせる
- 精米歩合の数値が低いもの…雑味のないすっきりした味わいのお酒になる
- 吟醸造り…フルーティな香りがするお酒になる
そして、それぞれの特定名称酒の傾向としては…
- 純米大吟醸酒…純米吟醸酒よりも米を削っているのでさらにすっきりとした味わい。
- 純米吟醸酒…フルーティな香りがあり、なおかつお米の甘味が感じられる、柔らかい味わい。
- 純米酒…お米本来の旨味やふくらみが感じられる味わい
- 大吟醸酒…吟醸酒よりも米を削っているので華やかな香りがありながら、さらにすっきりとした味わい。
- 吟醸酒…醸造アルコールの作用により香味成分が純米吟醸系よりも華やか。
- 本醸造酒…アルコールのキレにより、シンプルなすっきりした辛口目の味わい
といった特徴があります。
特別純米酒、特別本醸造酒の「特別」の意味ってなに?
特別純米酒、特別本醸造酒の「特別」ってどういう意味?
まず、蔵元さんの商品のラインナップ内での区別をつけるためにこの「特別」表記が存在します。
①もともとある純米酒と区別するため
純米酒は精米歩合の制限がありません。
例えば蔵元の商品の中に精米歩合70%の純米酒があったとします。
もうひとつ、精米歩合を60%まで磨いた純米酒を造った場合、こちらに「特別」と付けて区別します。
②もともとある純米吟醸酒と区別するため
上と似た理由になりますが、60%まで磨いた純米酒、だと条件が吟醸酒と同じになってしまいます。
純米吟醸酒の特徴は「フリーティな香りがするタイプ」のお酒です。
精米歩合、原材料ともに純米吟醸酒と同じだけれども、純米酒の特徴である「お米本来の旨味を味わうタイプのお酒」として造られたものの場合に「特別」と付けて区別します。
また、他の商品との区別目的で無くても蔵元が「○○に特別にこだわって造りました」と理由を表記すれば「特別」を名乗ります。
③他の商品ラインナップと違う酒米を使っている
酒造好適米や無農薬のお米を使用したり、原材料の米にこだわっている等があれば、「特別」を付けて区別します。
④他の商品ラインナップと違う造り方をしている
絞り方が木槽絞りである等、特別な製法で造られた日本酒も「特別」と付けられます。
特別本醸造も同じ理由で「特別」が付きます。
もし特別純米・特別本醸造の商品を見つけたら、その蔵元さんのHP等で他のラインナップをみてみると、違いが分かりやすいと思います。
特定名称酒は品質の良し悪し(ランク)の判断基準ではない
8種類の特定名称酒の中で言うとそれぞれ味の特徴はありますが、これは品質や味の良し悪しではありません。
純米大吟醸、大吟醸が他のお酒に比べて値段が高いからいいお酒で、純米酒や本醸造はリーズナブルだからそこそこの品質、と思っている人も多いですが、それは違います。
上にも書きましたが純米大吟醸、大吟醸の値段が高いのはお米が削られる分たくさん米の量が必要で、かつ吟醸造りなので出来上がりまでに時間がかかるからです。
純米酒だって生もと造り(蔵付きの酵母を取り込む)で造られるものには手間と時間がかかります。
特定名称酒の条件の中に、どれだけ手間と時間がかかっているかの判断基準は無いですからね。