海外でも人気のフルーティーな日本酒の香りはどうして出る?
吟醸造りで華やかな香りに
特定名称酒の中には「純米吟醸」や「大吟醸」などの吟醸酒タイプのお酒がありますが、これら吟醸酒系の日本酒は果物のような、華やかな香りがするのが特徴です。
華やかな香りが立つように造られる製法です。
よく磨いたお米を低温の環境でゆっくりじっくりと発酵させていく方法で造られます。吟醸造りで造られたお酒は果物の甘い香りがするタイプのお酒になるんです。
まず、吟醸造りで使用されるお米は半分近くまで削られたもの。
米の成分のところにも書きましたが、お米の外側には香り成分を阻害する成分が含まれているんでしたよね。吟醸造りに使われるお米はしっかりと磨かれ、この香りを阻害する成分が殆どありません。
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また、お米をたくさん磨くことで、酵母に必要な栄養分が不足します。
さらに低温でゆっくり発酵させると、麹や酵母の活動が抑えられ、酵母が飢餓状態になるので自分でエネルギーを作り出そうとする力が働きます。
エネルギーを造り出す時、リンゴ、メロン、バナナ、パイナップルと同じ香りの成分となる酵素を使うため、フルーティな香りが発生します。
白菜やほうれん草等の野菜を極寒の元で育てると、甘味が増すとか聞いたことないですか?これは自らが凍らないように、自分で糖分を出すようになるので甘くなるんです。
吟醸造りの日本酒はどんな香り?
吟醸造りで発生する香りには代表的な成分があります。
酢酸イソアミル=りんご、メロン香
カプロン酸エチル=バナナ、パイナップル香
どうでしょう、日本酒に苦手意識がある方でも、お米をたくさん削っている、すっきりとしたフルーツ香のする日本酒なら、抵抗なく飲めそうな気がしませんか?
実際、海外でウケている日本酒や飛行機のファーストクラスで提供されているタイプのものは殆ど吟醸系のお酒です。
吟醸造りでは香りを発生させるため、酵母が生きるか死ぬかのギリギリの環境で発酵させなければならないので、管理が非常に大変な作業です。
また、低温で米が溶けにくい中で発酵させるので最終的な酒かす(搾りかす)も、通常の造り方よりも多くなります。酒かすが多い分、お酒になる部分が少なくなるのでコストもかかります。
まさに「吟味して造られた」日本酒で、お値段が張るものが多いのもうなずけます。
このギリギリ生かされている酵母。香りがどのくらい出るか出ないかは杜氏(とうじ)さんの腕にもかかっていますが、使用する酵母によっても香りを出しやすいものと、そうでないものがあります。
酒米にはたくさんの種類とそれぞれ特徴がありますが、酵母も同じでたくさんの種類があり、どの酵母を使うかによって香りの出方や仕上がりが違ってきます。フルーティな香りと言っても全部同じな訳では無いので、是非色々試してみてくださいね。
清酒酵母とは 酵母はパンを発酵させたり、味噌や醤油が作られる際にも使用される、微生物のことを指します。 この様々な種類の酵母の中で、日本酒を造る時に使用される酵母を「清酒酵母」と言います。 酵母は微生物なので肉眼では見えません。清酒酵[…]