三段仕込みとは
「酒母」がどういうもので、酵母がどうやって酒母内で生き残るのかは、前回書きましたが、この酒母をもとに本格的な日本酒造りがスタートします。
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前回は速醸系酒母と生酛系酒母について、更に生酛系酒母はその造り方によって生酛仕込み、山廃仕込みに分けられることを書きました。 [sitecard subtitle=関連記事 url=https://anz-shop.com/syubo[…]
まずは酒母に蒸米、麹、水を追加し、「醪(もろみ)」(日本酒を搾る前の状態のもの)を造りますが、醪造りに必要な蒸米、麹、水の投入は4日間で3回に分けて行われます。これを三段仕込み、と言います。
一度に蒸し米、麹、水を投入してしまうと酸性濃度が薄まってしまい、他の菌が入り込んで活動できるようになってしまいます。せっかく天下を統一した酵母達が他の菌にやられてしまうのです。
まず最初に入れる蒸米、麹、水の量は酒母と同量。酵母菌が過半数を取っていれば酵母が多数派であるというバランスは崩れません。
1回目に蒸米、麹、水を投入する作業を初添えといいます。初添えの翌日は何もせずに酵母が増えるのを待ちます。
これを踊りと言います。酵母菌が発酵して泡がモコモコと踊っているように見えるからそう呼ばれているとも言われています。
踊りの翌日、酵母菌が十分に増殖したらさらに蒸米、麹、水を投入します。
二回目の投入作業を仲添えと言います。
さらに翌日、最後の蒸米、麹、水を投入します。3回目の作業です。これを留添えと言います。
最終的には酒母の8倍程のお酒が出来上がります。三段仕込みが終わった後、本格的に発酵が始まります。
日本酒は並行複発酵で造られます。
米のでんぷんがブドウ糖に変化する糖化と、ブドウ糖がアルコールに変化する発酵が同一タンク内で行われるのが特徴です。
酵母が糖をエサにアルコールを生み出し約2週間~1か月かけて、発酵が進みます。最終的に白いドロドロとした粥状態の液体になり、醪の完成です。
仕込み回数が多くなるほど、酵母がアルコールに分解する力が弱くなっていくので、麹菌が造り出す糖分が余ってくるので、甘口のお酒に仕上がります。
イメージはこんな感じ↓
また、貴醸酒というタイプのお酒も甘口の日本酒です。通常の甘口日本酒と比べても格段に甘く、トロッとした蜜のような味の日本酒です。
日本酒度は-30度~-50度くらいです。日本酒度が-5~6度くらいから甘味を感じやすくなってくるので、いかに甘味を感じるお酒か分かりますね。
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貴醸酒が甘い理由は多段仕込み同様、酵母の活動が止まってしまうことが原因です。
三段仕込みの3回目(留添え)のタイミングで水の代わりに日本酒を投入します。
日本酒を投入することでタンク内のアルコール濃度が上がり、酵母が死滅(もしくは活動停止)します。
本来酵母に分解されるべき糖分が分解されずに残ってしまうことが甘口になるしくみです。
少し余談になりましたが、基本は3回の仕込みで終了となります。
さあ、お酒のもと(酒母)に材料(蒸米、麹、水)を投入して醪(もろみ)が完成しました。醪はどろどろのお粥のような状態です。
あとはこの醪を液体と固体に分けたら日本酒が出来上がります。この醪から液体を絞り出す方法にも色々名称があり、味の特徴があります。
搾り方について興味あれば是非下記記事をご覧くださいませ。
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